コラム no.3:始めと終わり、無限から取り出す数

2026.3.3

〈2026冬季研究会の事例より〉

●事例Aさん「2方向の輪抜き」での〈始点〉と〈終点〉

Aさんは、L字型の棒の先の輪を抜くところ〈終点〉をまず見たあと、棒の根本〈始点〉から輪を持って上へ、そして横へ動かして抜き取りました。一方の手で〈終点〉に触っていることもあります。輪を抜く前に〈終点〉に触れることで、動きを予測して、ここからここまでという〈始点〉〈終点〉を自分で決め、一つのまとまりのある行動を起こしています。

この教材は目と手の使い方の学習として使われますが、見て手を動かすことで、Aさんが、始めと終わりのある自分自身の空間・時間を作り出しているところに大きな意味があります。

●事例Aさん「5つの電池入れ」での〈電池を入れる順番〉

5つのフィルムケースに電池を入れる課題では、縦に置くと手前より、1・3・5・2・4、横に置くと右手側から1・5・3・2・4の順に電池を入れました。

端から順序良く電池を入れるという課題なので、この入れ方では“誤り”、課題ができなかった、ということになってしまいます。たとえば、入れる順番を指し示す、入れるべき場所以外は覆い隠す、教材の提示方法、向き、タイミングを変えるなど順番に入れさせる方法は様々ありますが、まず、Aさんはこれをどのようにとらえたのかを考えてみます。

この学習の動画を見直してみると、「2方向の輪抜き」での様子と同様に、Aさんはこれらの5個のフィルムケースをひとまとまりの物と捉えて、両端と真ん中を作り、それから間を埋めた、というように見えます。そこに〈始点〉から〈終点〉へという方向性、順序は無いけれど5個を両端のあるひとまとまりとして捉えていることはよくわかります。これを数の学習への入り口と考えると、これまでの、また、これからの学習の展開が見えてきます。

●数は人間が作り出した概念であり、自然数だけをとってみても1・2・3・4…と無限に続いてしまう途方もないものでもあります。終わりが見えません。だから、数を扱うためには、なんらかの区切りをつけなければなりません。そこで、まずは無限の中から、たとえば1~5を取り出して、区切る。それらの始めと終わりを決めてまとめる。Aさんはこのような数への入り口を見せてくれているようでした。

以前、一緒に学習したRくんは、物を並べること、積み上げることが大好きで、石ころを並べ始めると際限がなく休み時間が終わっても教室にもどらないし、カードで学習しようとすると、ひたすら重ねて積み上げてしまう。Jくんはとにかく数字を1から順に書き連ねるのが好きで、これも止まらなくなる。空間や時間にうまく区切りをつけられない。
二人とも、このような行動をこだわりと言われてしまうことが多かったけれど、見方を変えれば、この、無限に続くものを目の前にみごとに展開して見せてくれていたのではないかと思います。この無限の世界から抜け出してみませんかと、様々な教材やかかわり方をあれこれ工夫し、失敗し、なんとか納得してもらって、区切りをつけ、始めと終わりを作って…二人ともそれぞれのやり方で少しずつ無限の世界から脱出してきたように思います。 

目や手の使い方などの初期学習、概念行動形成学習での、同じものをまとめて並べる分類学習、形などを見本と比べて同じか違うか判断する見本合わせ学習をもとに、長さ・高さ・大きさ…を比べて順序付けをする学習、隣と比べて、だんだん長く、だんだん大きくなっていく…など比較する学習では明確な方向性が生まれ、記号操作学習としての数系列版の学習につながります。数系列板は、横(順序)、縦(量)、それらが合わさった斜め(隣の数と比較できる)といろいろな観点で数を扱うことができます。
数は、一つだけを取り出して、たとえば物を3個置いて「3、サン、さん…」と繰り返し、その場では「さん」と覚えたとしても理解したことにはなりません。他の数と比較し、それらの関係の中で理解されていくものと思います。

机の上の教材が無限に続くものをぎゅっと固めて整理して見せてくれます。

※中島昭美先生の講演録「数とは何か」の一部をレポートアーカイブに掲載いたしました。ぜひ、お読みください。

2026.2.28 間野 明美